本来、「キャリア」という言葉には、色々な意味があります。
神戸大学の金井壽宏先生やリクルートワークス研究所の大久保幸夫氏など、様々なキャリア理論を
ご指導くださる先生方は
、それぞれ「キャリア」の定義をお持ちでいらっしゃいます。
「キャリア」には、「仕事」、「職歴」、「プロとしての仕事」など、様々な解釈があるようです。
私の、ここでいうキャリアトランジションの「キャリア」とは、広義な意味で、「何かやりがいを感じて
専心しておこなっていること」あるいは、「もっとも自分らしいことだと感じていること」。
そして、トランジションとは「節目、転機」のことです。
そういった広義な捉え方から考えると、私たちには、色々な「キャリアトランジション」があります。
私たちのキャリアトランジションは様々。 |
ビジネスシーンを例にあげれば:
・ 学生から社会人となるというキャリアトランジション
・ 技術職から営業職に移動するというキャリアトランジション
・ 転職というキャリアトランジション
・ 独立、起業というキャリアトランジション
・ 退職というキャリアトランジション
・ 倒産というキャリアトランジション
プライベートシーンを例にあげれば:
・ 結婚し、親となり、自分の社会的役目が増える、あるいは変わるというキャリアトランジション
・ 離婚というキャリアトランジション
・ 自分の人生哲学を見つめ直すことによるキャリアトランジション
など、キャリアを広義に捉えれば、色々な場面で、人生には「やりがい」や「目標」や「人生の方向性」の節目や転機があります。
そんなキャリアトランジションという理論を、私が知ったきっかけは、
まさに、自分自身が「キャリアトランジションの真っ只中にいた苦悩の時」でした。
私は、1988年ソウルオリンピック後に21歳で現役を引退。その後、数年間、ナショナルコーチという恵まれた仕事をさせていただきながらも、いわゆる「キャリアトランジション」のなかで「何が不安であるかもわからず」、悶々とした日々を過ごしました。
コーチとしての新しいキャリアを築こうとするなかでも、シンクロ「選手」というアイデンティティに執着、現役を離れることでの「選手としての自分」が風化してゆくことの恐怖から、無意識のうちに目を背けながら自己を保っていたというのが本音です。
そんな矢先、JOC在外コーチ研修制度を受けさせていただける機会に恵まれ、当初は2年間のアメリカ留学。その後も自費留学を続け、合計7年間アメリカでの大学院で学んだ、スポーツ心理学、コーチ学、認知行動療法、アスレティックリタイヤメント、キャリア・トランジション、パフォーマンスエンハンスメントといった学問分野を通して、悩んでいた数年間の自分の心理状態は、まったく特別なものではなく、多くのアスリートがぶつかる壁であることを学びました。
トランジションをくぐり抜けてきた、もしくは、「くぐり抜けよう」と、もがき続けている実体験から、学問分野としての「キャリア・トランジション」にこだわらず、考え方そのものを広く探求、時には奥深く追求し、そしてそれらをご紹介していくことで、ぜひ日本のアスリートのみならず、あらゆる「トランジション=節目、転機」を経験していく方々のお役立てができれば、と事業化したことが最初のきっかけです。
そもそも、事業化と簡単にいっても、それ以前の「起業」自体が、大きなトランジションであったことは言うまでもありません。
最初の起業は、合計7年間の海外生活を終えて帰国してすぐの2001年です。当時、エンターテインメントビジネスに携わっていた中川準子とともに、田中京・中川準子事務所を設立。そして2003年4月に有限会社MJコンテスに、さらに2006年に株式会社MJコンテスに組織変更されました。現在の(株)MJコンテスは、「心身相関の健康」を主軸に8つの事業部に分かれていますが、創業以来、とくにメンタルトレーニング、キャリアトランジションといったスポーツ心理学をベースにしたメンタル部門には力を入れています。
常に基本としてきた経営指針、それは「学術的、論理的根拠のしっかりとした心身の健康促進、心への取り組み」です。そんな経緯から考えても「トランジションにおいての健全な悩み方の推奨」あるいは、その悩みに対する「コーピング方法=ストレス対処方法」をサポートの重要な柱の一つとしていくことは、有効なものであると確信しています。
現在では、「心の健康」だったり、「アスリートのセカンドキャリア問題」だったり、「終身雇用時代からの変化によるキャリア構築」といった言葉も、メディアで増えてきましたが、起業直後の2001年当初は、どのようなスポーツ団体に、アスリートのセカンドキャリア問題の重要性を唱えても、まったく認知の低いものでした。低いどころか、反感の方が多く、「まったく必要のない考え方である」ということでした。
そのため、まずは「その分野の社会的認知活動から地道にはじめよう」という姿勢のもと、数十社の出版社をたずね、書籍を発刊することから少しずつ活動を始めました。最初の著書「恋も仕事も結婚も!わくわくハピネス術」(しょういん刊)では、一五輪選手のトランジションにおける葛藤と、その葛藤に対するスポーツ心理学的視野からみたメンタルスキル紹介をしました。次に2冊目の「ライフトランジション」(しょういん刊)では、アスレティックリタイヤメント、キャリア・トランジションといった分野における先行研究をもとに、ライフスキルや価値観の重要性、アスリートが陥る心理状態の事例などを、アスリートからの視野だけでなく、広く一般 の読者にもご理解いただけるように汎用させて「キャリア・トランジションとは」を発表しました。この著書を発刊するにあたっての様々な研究資料が、幸いなことに、現在、弊社で構築している、あらゆるプログラムの原点になっています。その後も著書を出版し続けてはおりますが、そのすべての根底にあるテーマは「実体験に基づいたものであること」、そして「学術的、論理的根拠に裏付けられた心身の健康促進への取り組みであること」です。
恋も仕事も結婚も!わくわくハピネス術 |
ライフトランジション |
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2002年には、朝日新聞の「ひと」欄に取り上げていただいたことをきっかけにお声がけいただいた社団法人日本プロサッカーリーグとのご縁ができ、Jリーグ内でのキャリア・サポートプログラムの構築に携わるという機会を得ました。
それに続き2003年には、JOCゴールドプラン・セカンドキャリアプロジェクト発足。
プロジェクトメンバーとして、キャリア・トランジション理論の啓蒙活動、推進活動とともに、様々なオリンピック選手のためのキャリア・トランジションサポートプログラムを開発、構築、実施しています。
2004年からは、日本女子プロゴルフ協会、日本プロ野球OB会といったプロスポーツ団体においてもサポートプログラムのご紹介をおこなっています。なかでも日本女子プロゴルフ協会では3年にわたってキャリア・トランジション、メンタルトレーニングについての講義を担当しています。
また、これらの活動を支える企業としての社会還元活動として、2004年4月より、1-2ヶ月に一度の割合で、完全無料の自社研究発表の場として<アスリートのためのキャリア・トランジション勉強会>を主宰しております。この勉強会は、開始当初から元Jリーガーで現在Jリーグにお勤めの重野弘三郎氏との共同主宰でおこなっています。毎回スポーツ界のみならず、様々なエリアで活躍するゲストを迎えて実施されるこの勉強会は、ミズノ株式会社様の会場提供協力のもと、年間のべ300人以上が参加する公開レクチャーの場へと発展しました。
最近では自らの人生の岐路を考える一般の方々の参加も増えており、活動そのものはスポーツ界のキャリアドリフト、キャリアデザインを紹介している場になってはいるものの、永久雇用崩壊やニート、フリーター問題、団塊の世代のセカンドキャリアといった現代の日本社会が抱える問題などと共通する課題解決にもなる方向性を目指しています。
まだまだ日本では現場における実施歴の浅いエリアであるために、キャリア・トランジションサポートそのものは、国内においては、キャリアデザイン、キャリアプランニング的な経営学、社会学からのアプローチとしてのキャリアサポートは存在しても、アスリートに特化したサポートプログラムが稀少な存在であることは事実と思われます。
プログラム構築にあたっては、つねに新しい学術情報やプラクティカル情報を必要とするため、毎年数回、世界的に「DR.リタイヤメント」という呼び名で知られている心理学者デビッド・ラバリー博士にメンターとしてのご指導をいただいています。またキャリア・トランジションの概念モデル構築者であり、西海岸では大変著名なパフォーマンスサイコロジストのジム・テイラー博士とも情報交換を定期的におこなっています。 
今後とも、大変地味な活動ではございますが、引き続き常に質の高いプログラムを目指して精進してまいりたいと思います。
田中 ウルヴェ 京
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